無人店舗ビジネスのメリットと課題は?事業モデルと一緒に解説
接客や案内のための人員を置かない無人ビジネスは、新しい販売・サービスの提供方法として注目を浴びています。無人ビジネスの展開方法にはいろいろな選択肢があり、これまでの事業モデルを参考にして、どのようにビジネスを展開するか戦略を立てる必要があるでしょう。
この記事では、無人ビジネスを支えるテクノロジーや、無人ビジネスによって得られるメリットについて、代表的な事業モデルとあわせて紹介します。
1.無人ビジネスとは?
店舗に店員が常駐している従来のスタイルとは異なり、無人で店舗を運営する新しい形態です。無人店舗の運営方法には、商品を持ってゲートを通るだけで会計が完了するウォークスルー型や、顧客がみずからチェックアウトをするセルフレジ型、陳列棚やレジの設置が不要な自動販売機型など、さまざまな種類があります。
AIやloTといったデジタル技術をもちいてオペレーションが自動化されているため、店舗に人員を配置することなく顧客への対応が可能です。顧客のニーズが多様化しているこの時代に、小売業は従来どおりのビジネスを展開しても集客が難しくなってきており、無人店舗による顧客ニーズに合わせた販売形態やサービスの提供が注目されています。
無人ビジネスが広がっている背景
日本の労働力人口は減少傾向にあり、総務省の試算によると2021年には6,860万人だった労働力人口は、2050年に5,275万人まで減ると予測されています。小売業界でも、働き手不足は深刻な問題です。
無人ビジネスという新しい業態を可能にした要因のひとつは、デジタル技術の急速な進歩です。無人店舗では、人的な労働力の代わりとしてAIカメラや顔認証、セルフレジなどのシステムが導入されています。
また、新型コロナウイルス感染拡大防止への対応も、要因としてあげられるでしょう。買い物やスポーツジムの利用といった日常シーンでも、できるだけ人と会わないように済ませたいというニーズが増え、無人販売や無人サービス提供の需要が拡大しています。
2. 無人ビジネスを実現する最新テクノロジー
無人ビジネスでは、無人化を実現するためにさまざまな設備が導入されています。どのようなシステムが店舗運営に活用されているのか、一例をみていきましょう。
顧客インターフェイス・システム
有人店舗では、顧客の受付や接客を店にいる店員がおこないますが、無人店舗では従業員に代わってシステムがオペレーションを担います。また、システムを活用すれば、利用者情報の取得も可能で、顧客ごとにおすすめの商品を提案するほか、キャンペーン情報やクーポンを個別に提供することも可能です。
決済や精算などの業務
従来の有人レジに代わって、セルフレジを導入する店舗が増加しています。セルフレジはスーパーマーケットやコンビニで多くみられますが、飲食店やフィットネスクラブ、アパレルショップといった多様な業界で採用されています。
セルフレジでは、顧客が自分で商品のバーコードスキャンから精算までおこないますが、無人ビジネスの決済方法はキャッシュレス決済が主流です。現金での精算を取り扱うには精算機の設置が必要で、おつりの不足や精算機の故障といったトラブルも起こりがちです。
それに対して、クレジットカード・電子マネー・QRコードによるキャッシュレス決済はシステムを活用したシンプルな運営ができ、多くの無人ビジネスが決済方法として導入しています。
セキュリティ対策
無人ビジネスにおける店舗管理には、セキュリティ対策が不可欠です。無人店舗では、顧客が安全にサービスを利用できるように防犯設備を整える必要があり、無人店舗のセキュリティ対策として定番なのは防犯カメラです。
また、無人ビジネスには、スマートロックを活用した入退室管理システムも向いています。スマートロックによる入退室管理は、予約システムと連動させることで顧客の来店時間にあわせて権限を付与できるため、不正な入室を防げるのが特徴です。
3. 無人店舗ビジネスのメリット
オペレーションを効率化することにより、無人化した店舗では多くのメリットが得られます。ここでは、無人ビジネスがもたらす利点の一部を紹介します。
人件費を抑えられる
人手不足や最低賃金の引き上げなどの影響から、人件費が企業の経営を圧迫しています。無人店舗は、最新のテクノロジーを導入して店舗を無人化・省人化することにより、人件費を従来の有人店舗より低く抑えられるというメリットがあります。
24時間営業が可能になる
小売店などでは24時間営業にすると集客が増える事例も多く、店舗を年中無休・24時間営業にすることで売上アップにつながる可能性があります。ただし、有人店舗では深夜帯の求人をかけてもスタッフが集まらないケースがあり、運営が難しい場合もあります。
その点、無人ビジネスは時間帯に関係なくシステムによる店舗運営がおこなえるため、24時間営業が可能です。
顧客行動のデータを収集できる
AIカメラなどのシステムは、顧客の性別や年齢といった属性を判別して、性別・年代ごとに購買の傾向をデータとして収集します。そのため、無人店舗に入退店管理や購買データの収集ができるシステムを導入すると、顧客の購買行動を分析し、経営戦略を立てるための材料として活用できます。
万引きなどの犯罪抑止効果が見込める
無人販売店で商品が窃盗にあったというニュースが流れることがあり、無人ビジネスは犯罪者に狙われやすいというイメージを持っている人もいるでしょう。実は、無人店舗には犯罪抑止に効果的という側面もあります。
小売店を悩ませる万引きは、防犯カメラによる抑止力が高く、無人店舗に防犯カメラを設置することで発生件数を減らせます。事前登録制や予約制で、入店時に顔認証・QRコード認証・暗証番号入力などを求めるシステムも、不審者の侵入を防ぐのに有効です。
4. 無人店舗ビジネスの課題
無人店舗の展開を検討するときは、そのメリットだけでなく問題点にも目を向けましょう。無人ビジネスをスムーズに運営できない要因として、3つのポイントを紹介します。
初期費用が高い
無人ビジネスを始めるときは、入退店システム・カメラ・センサー・決済システムなどの設備が必要です。人件費は抑えられますが、システム導入にかかる初期費用は高額になりがちなので、初期投資に対してどれくらいの期間で投資回収ができるか、事前に計画を立てておきましょう。
まとまった初期費用を用意するのが難しい場合は、サブスクリプション型やレンタルのシステムを利用するのもひとつの方法です。
顧客側の心理的ハードルが高い
日本ではキャッシュレス決済が普及しつつありますが、現金で支払いたいという人の割合も多いのが現状です。高齢者を含め、機械や端末の操作が苦手な人にとっては、現金払い不可の方式がハードルとなって、足を運びづらい場合があるでしょう。
入退店管理も、システムが複雑だと利用しづらく顧客離れの原因になってしまうので、かんたんな操作で利用できるように工夫しなければなりません。
イレギュラーに対応しにくい
無人店舗を管理するシステムは、万能ではありません。店舗ではさまざまなトラブルが起こりますが、システムだけではイレギュラーな事象に対応できないことがあります。
たとえば、来店客が決済端末の操作を誤って精算できないケースや、決済システムのトラブルで機器が動かないという事例はよく起こりがちです。また、顧客が設備の使い方を間違えて故障させてしまう場合もあるでしょう。
5. 無人ビジネスのモデルの例
野菜の無人販売所は古くから各地に設置されていますが、現在はさまざまな業種で無人ビジネスの展開が始まっています。ここでは、無人ビジネスの事例を業種別に紹介します。
小売業のモデル例
コンビニやスーパーでは、無人化に向けて実験店舗の検証をおこない、無人店舗を増やす動きが広がっています。無人決済を実現するために、小売大手企業はAIなどを搭載した最新システムを導入しています。
コンビニ
無人化されたコンビニでは、顧客の入店をセンサーなどで管理し、ウォークスルー型なら商品を一つひとつスキャンすることなく手に取った商品が自動で認識され、会計画面に表示されます。無人コンビニは、都心部のオフィス街などを中心に導入が始まっていて、仕事で忙しい人や深夜に買い物をする必要がある人にとっては非常に手軽で便利です。
アパレル
アパレル大手でも、一部の店舗を無人化する動きがあります。完全自動型のアパレル店では、店舗に並べられた服を顧客が自由に選び、会計や在庫管理をシステムで一括して管理するので、店員による接客はありません。
そのほかに、リモート接客による半有人の運営を採り入れた事例や、店内に3Dスキャナなどを設置して採寸のみをおこない、顧客の体型に合ったサイズの服を自宅に後日届ける採寸特化型のショップも登場しています。
飲食店
海外のファーストフード店の事例では、顧客がモニターで料理を注文し、できあがった料理は専用のロッカーに入れられ、ロッカーをノックすると料理を受け取れるという仕組みが導入された店舗があります。会計もクレジット払いのみで、フロアには店員がひとりもいません。
日本での事例は少ないですが、寿司ブリトーを提供する店で無人オーダーシステムを採用した例があります。店頭にはオーダー用の端末がなく、顧客は自分のスマートフォンを使って料理を注文します。そのまま決済もスマートフォンで済ませるシステムで、注文や会計用の端末を設置しないことにより、初期費用を大幅に削減しています。
冷凍食品等の販売所
餃子などの冷凍食品を中心として、無人販売店が増えています。食品の無人販売店は24時間いつでも好きなときに商品を購入でき、店内には商品が並んだ大型の冷凍庫が設置されています。
食品の無人販売は、少ない開店コストで始められるのが特徴です。店頭に置かれた料金箱に商品の代金を入れるというアナログな方式を採用すれば、高額なシステムを導入せずに運営できるからです。
サービス業のモデル例
小売店だけでなく、サービス業でも無人店舗が導入されつつあります。サービス業の無人ビジネスの事例を2つあげて、どのような仕組みが採り入れられているのか解説します。
トレーニングジム
スポーツジムは、好きな時間にトレーニングしたいという顧客からの要望が多く、無人店舗による24時間営業と相性のよい業種です。無人運営のトレーニングジムでは、無人化を実現するために予約システムやスマートロックが活用されています。
完全予約制にすることにより、顧客はほかの利用者と顔を合わせることなく、ゆったりと自分のペースでトレーニングできます。予約システムとスマートロックを連動させれば、顧客の入退店をシステム上で管理可能です。
室内ゴルフ
ゴルフの練習といえば、屋外の打ちっぱなし練習場が定番でしたが、最近は完全個室制の室内ゴルフ練習場が人気です。無人運営をおこなっているインドアゴルフ練習場もあり、シミュレーターが設置された個室で人目を気にすることなく練習に打ちこめるでしょう。
入店はスマートロックで管理され、顧客は予約時間に来店して事前にメールなどで送られてきた暗証番号を入力し、ロックを解除して入店します。
その他のモデル例
商品の販売以外にも、レンタルスペースや貸し会議室、シェアオフィス、セルフエステ、セルフ脱毛など、幅広いサービスで無人ビジネスが採用されています。その運営方法の一例を紹介しましょう。
コワーキングスペース
コワーキングスペースは、オフィスとしての基本機能が備えられたスペースを、業種や所属先に関係なくさまざまな人が共同で使えるサービスです。無人で稼働させることにより、24時間営業が可能なので、夜間もオフィスを使いたい人のニーズに対応できます。
コワーキングスペースを無人運営するには、利用者の入退室を管理するスマートロックの設置が必要です。利用者は事前登録をして、入室時にICカードやスマートフォンの操作で解錠します。
サウナ
他人と接触せずにサウナを楽しみたいという要望を受け、プライベートサウナや個室サウナを提供する企業が増えています。個室サウナの特徴は、ひとりや少人数のグループでの利用に対応していることです。
個室ごとに温度を変えられる施設もあり、顧客がそれぞれ好みの温度に調整できます。サウナの個室への入退室はスマートロックで管理されているため、プライバシーを確保しながら顧客に充実した時間を過ごしてもらえます。
6. まとめ
無人ビジネスは店舗運営のためのシステム導入に費用がかかりますが、設備をそろえれば人件費を削減して営業できるため、ランニングコストは有人店舗に比べて抑えられる可能性があります。無人店舗に設置するシステムにはさまざまな種類があるため、自店に適したシステムを選択しましょう。
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