入退室管理システムの顔認証とは?導入前に知っておくべきポイント
入退室管理システムの顔認証は、顔を識別することで建物への出入りを管理するシステムです。認証が迅速で、なりすましや不正侵入を防止できるなどの高いセキュリティ性を誇るのが特徴です。一方で、プライバシー保護に関する課題や、一部の製品では認証精度に問題を抱えています。
本記事では、顔認証を活用した入退室管理システムの機能や特徴について解説しています。また、製品選定のポイントも紹介しているため、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
1. 入退室管理システムで用いられる顔認証とは
顔認証は、利便性・セキュリティ・衛生面に優れている認証方法です。以下で顔認証システムの特徴や機能について紹介します。
顔認証による入退室管理システムの特徴
顔認証は、生体認証技術のひとつです。人の顔の特徴を読み取って本人確認を行うため、とくにセキュリティ性が高い認証方法として注目されています。
入退室管理システムに活用する場合、ゲートやドアに設置されたカメラが利用者の顔を撮影し、その画像をもとに顔の特徴を解析します。登録済みの顔データと照合し、一致した場合のみ入室を許可する仕組みです。
顔認証技術のメリットは、従来の認証方法に比べてセキュリティ面で優れていることです。たとえばIDカードやパスワードは、他人に貸与または盗まれるリスクがあります。一方で、顔認証は本人の顔が直接キーになるため、不正利用が極めて困難です。
カードや鍵を持ち歩く必要がないため、紛失や置き忘れの心配がありません。顔さえあれば認証できるため、利便性が非常に高いといえます。
また、認証速度も従来のものよりもスピーディです。わずか数秒で本人確認が完了するため、混雑するエリアでの待ち時間の短縮につながります。
顔認証の入退室管理システムの主な機能
顔認証システムには、以下のような便利な機能が搭載されています。
・解錠コントロール
顔認証と電気錠を連動させることで、認証が成功した場合にドアやゲートを自動で解錠します。
・スケジュール管理
曜日や時間帯ごとに利用条件を設定できます。たとえば、有効期限付きのアクセス権や特定の時間内のみ使用可能な設定を行うなど、柔軟なスケジュール調整が可能です。
・入退室履歴の管理
入退室の記録をシステムに保存し、必要に応じて確認やデータのダウンロードが可能です。管理や分析に役立ちます。
・他システムとの連携
勤怠管理システムや予約管理システムなど、さまざまな業務用ソフトウェアと連携が可能です。業務全体の効率化に貢献します。
・入退室の通知機能
認証情報をリアルタイムで管理者に通知する機能を搭載しています。不正アクセスや緊急時の対応にも役立ちます。
・健康管理および感染症対策
体温測定やマスクの着用を検知する機能が組み込まれたシステムもあり、利用者の健康状態を確認できます。感染症対策としても有効です。
・セキュリティ機能の強化
IDカードとの二要素認証やセキュリティゲートとの連動、さらには火災報知器などの防災システムとの連携が可能です。これにより、施設全体のセキュリティレベルを向上できます。
2.各認証システムのメリット・デメリット
入退室管理システムでは顔認証以外にも、暗証番号・専用ICカード・交通系ICカード・スマートフォンアプリなどの認証方法があります。以下でそれぞれのメリットとデメリットを解説します。各認証方法を比較して、自社に最適なものを選びましょう。
暗証番号のメリット・デメリット
暗証番号認証は、入り口に設置されたリーダーに暗証番号を入力して解錠する、最も一般的な認証方法です。
メリット | ・鍵やカードを持ち歩く必要がなく紛失の心配がない ・新しい利用者が増えても鍵の複製やカードの再発行が不要 ・導入や運用コストを低く抑えられる |
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デメリット | ・番号の盗み見や流失のリスクがある ・利用者が番号を忘れると入室できなくなる ・セキュリティを維持するために暗証番号を定期的に変更する必要がある |
暗証番号認証は、導入や運用コストが抑えられるため、手軽に始めやすいのが特徴です。ただし、盗み見や番号流失のリスクがあるため、定期的な番号変更や認証方法の併用といった対策を講じる必要があります。
専用ICカードのメリット・デメリット
専用ICカード認証は、社員証やオフィス・工場の入退室に使われるICカードを活用した認証システムです。入り口のリーダーにカードをかざすことで解錠できます。
メリット | ・データが暗号化されているため偽造されるリスクが低い ・入退室記録を保存できるため管理に役立つ ・既存のカードを利用できれば新たな発行にかかる手間や費用を削減できる |
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デメリット | ・紛失または盗難された場合不正利用されるおそれがある ・カードを忘れると入室できない |
専用ICカード認証は、既存カードを活用できる場合にコストを抑えられるのが大きな利点です。ただし、カードの紛失や盗難、持ち忘れといった物理的リスクに注意が必要です。
交通系ICカードのメリット・デメリット
交通系ICカード認証は、公共交通機関の乗車料金支払いや決済などで利用しているICカードを活用した認証システムです。
メリット | ・入退室履歴を記録できるためセキュリティ管理を強化できる ・新たにカードを用意する必要がない ・非接触型なので衛生的 ・交通機関や店舗の決済にも利用できるため1枚で複数の用途に対応可能 |
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デメリット | ・カードを紛失した場合セキュリティのために無効化や再発行の手続きが必要になる ・カードを持参していないと入室できない |
交通系ICカード認証は、日常的に使用しているカードをそのまま活用できる利便性が魅力です。非接触型で衛生面にも優れ、スムーズな認証が可能ですが、カード紛失や持ち忘れによるリスクには注意が必要です。
スマートフォンアプリのメリット・デメリット
スマートフォン認証は、モバイルアプリを利用した認証方法です。端末をリーダーにかざすか、一定範囲内で通信することで認証します。
メリット | ・ほとんどの人がスマートフォンを持ち歩いているため追加のデバイスを持つ必要がない ・ICカードや鍵の発行・管理にかかるコストが不要 ・管理者が遠隔で入退室権限を付与できるタイプもある ・一時的にゲストや従業員に権限を付与できる |
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デメリット | ・スマートフォンを紛失すると不正利用されるリスクがある ・スマートフォンを使用しない従業員には不向き |
スマートフォン認証は、専用カードや鍵が不要で、スマートフォンだけで入退室が可能です。カードの紛失による再発行の手間やコストもなく、一時的なゲストや従業員への権限付与も行えます。
生体認証のメリット・デメリット
生体認証は、指紋や顔、虹彩などの身体的特徴を利用して本人確認を行う認証方式です。認証デバイス(指紋リーダーや顔認証カメラ)に接触または非接触で認証が行われます。
メリット | ・手ぶらで入退室ができる ・認証スピードが速い ・紛失や盗難のリスクがない ・カードの発行や紛失対応など物理的な管理業務が不要 |
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デメリット | ・高精度なセンサーやカメラが必要なため導入コストが高くなる ・環境や状況によって認証精度が低下する場合がある ・プライバシー保護の観点から利用に抵抗を感じる人もいる |
生体認証は、利用者の身体的特徴を利用するため、不正利用や偽造が非常に難しいという特徴があります。生体情報の取り扱いには十分に注意する必要があるため、適切なデータ管理が求められます。
3. 顔認証入退室管理システム導入時の注意点
顔認証技術は高いセキュリティを提供しますが、個人の身体的特徴を使うため、導入時には注意しなければならない点があります。以下で、顔認証技術を導入する際に、気をつけるべきポイントを紹介します。
顔データの管理
顔認証システムを導入する際、利用者や従業員の顔情報を登録する必要があります。この顔データは、システムが本人確認を行うために必要な情報ですが、その取り扱いにはとくに注意を払わなければなりません。
通常、顔データは暗号化や抽象化が施されるため、容易には解読されない形で保存されています。抽象化とは、顔の画像データそのものを保存するのではなく、顔の特徴(目と鼻の間隔や輪郭の形状など)を数値データやパターンとして抽出し、それを記録する仕組みのことです。
とはいえ、万が一の事態に備えるためには、管理には慎重な対応が求められます。顔データを保存するクラウドサービスを選ぶ際は、セキュリティ対策が厳格に行われている信頼性の高いサービスを利用することが大切です。
また、システムへの不審なアクセスや異常を早期に発見し、対処できる監視体制の構築も欠かせません。これらの対策を講じることで、顔データを安全に管理できます。
利用者への説明と同意
顔認証に使用されるデータは、漏洩すると重大なプライバシー侵害を引き起こす可能性があり、法律で厳格に保護されています。そのため、顔データを利用する目的や保存期間、第三者への提供は利用者に事前に説明し、同意を得ることが必要です。
データを無断で収集することはプライバシーの侵害につながりかねないため、収集や管理では細心の注意を払わなければなりません。
個人情報保護法の観点から取り扱いルールを定めると安心
個人情報保護法では、個人情報を適切に取り扱うためのルールが3つの場面に分かれて定められています。以下の内容を参考に、自社の取り扱いのルールを確立しましょう。
- 1.個人情報の取得・利用時
- ・個人情報を収集する際はその利用目的を明確にし、ホームページなどで公表、または本人に伝える。
- ・収集した情報は、目的以外に使用しない。
- ・異なる目的で使用する場合は、必ず本人の同意を得る。
- 2.個人情報の保管・管理時
- ・個人情報が漏れないよう、適切に管理する。
- ・従業員や委託先が適切に個人情報を保護しているか監督する責任がある。
- ・情報漏洩や不正アクセスがあった場合、個人情報保護委員会に報告し、本人に通知する。
- 3.個人情報の提供時
- ・個人情報を第三者に提供する際は、基本的に本人の同意を得る。
- ・本人からの「情報の確認」「修正」「利用停止」などの要請には、適切に対応する。
- ・提供した情報は、いつ、誰に、どの情報を提供したかを3年間記録として保存する。
出典:政府広報オンライン「個人情報保護法を分かりやすく解説。個人情報の取扱いルールとは?」(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201703/1.html)
このように、個人情報を収集、利用、提供する際には、本人の同意や適切な取り扱いが求められます。個人情報保護法に従ってデータを適切に管理することで、利用者や従業員の信頼を得られます。
導入準備にかかる時間
規模にもよりますが、顔認証システムの導入には1〜2か月程度の準備期間が必要です。導入を検討している場合は、スケジュールに余裕を持たせるためにも、早期の計画立案が大切です。
準備期間が1〜2か月かかる理由は、顔認証システムの導入には複数の工程を経る必要があるためです。以下は導入の主な流れです。
- 1.ヒアリングと機器の選定
- 2.現地調査
- 3.見積もりと発注
- 4.工事開始
- 5.最終確認と導入後のサポート
導入の際は、システムを利用する従業員や利用者の顔データの登録も必要です。事前に了承を得る必要があるため、これらの準備も早めに行いましょう。
運用フローの整備
顔認証システムを導入する際には不測の事態に備え、事前に運用フローを整備することが大切です。便利で安全性の高い技術ではありますが、以下のようなトラブルが発生する可能性があるからです。
- ・システムが顔を正しく認識できない場合もある
- ・ネットワークや電源トラブルによりシステムの停止が起こるリスクがある
これらの事態に備えて、以下のような対策を事前に講じておきましょう。
- ・認証エラーが発生した際の具体的な対応手順を明確化する
- ・システム障害時の緊急連絡先や代替手段を利用者に周知する
顔認証システムを安心して利用してもらうためには、万が一の事態にも柔軟に対応できるように運用体制を整えておく必要があります。トラブルを最小限に抑え、利用者に安心して利用してもらうためにも、リスクを見据えたフローを事前に構築しておきましょう。
製品による認証精度の差
基本的に、顔認証システムは高い性能を備えていますが、メーカーや機種によって認証精度に違いはあります。そのため、選定する際は、製品による認証精度の差にも注目しましょう。
認証精度の高い製品は、登録された人物を正確に識別し、似た顔を持つ他人との区別も可能です。なりすましや誤認証を防げるため、高いセキュリティ性を誇ります。また、認識スピードが速い製品は認証にかかる時間を短縮でき、利用者の利便性を高めることが可能です。
一方で、認証精度の低い製品では、以下のような場面で認証エラーや誤作動が発生しやすくなります。
- ・マスクやメガネの着用
- ・化粧や髪型の大幅な変更
- ・加齢や外見の変化
認証エラーや認証に時間がかかると、利用者が不便を感じてしまうため、導入時には製品の認証精度や認証スピードに注目することが大切です。
4.顔認証入退室管理システムの選び方
顔認証端末にはさまざまな製品があるため、どのモデルが最適かを見極めるのが難しいという方も多いでしょう。以下で、顔認証入退室管理システムの選び方について紹介します。
認証の精度と安全性
システムを選ぶ際には、認証精度と安全性を考慮しましょう。以下の点に注目してください。
- ・マスクやメガネなど身体の一部が隠れていても正確に認証できるか
- ・化粧や髪型の変化があっても本人を正しく特定できるか
- ・写真や動画を使用したなりすましを防ぐ対策が備わっているか
認証精度が低いシステムでは、認証に時間がかかり、業務効率の低下や不正侵入のリスクが高まる可能性があります。また、認証スピードも業務効率化の観点からは大切なポイントです。システムが顔を認識し、認証が完了するまでの所要時間を事前に確認することをおすすめします。
精度とスピードを兼ね備えたシステムを選ぶことで、安全性を維持しながら、スムーズでストレスのない入退室管理を実現できます。
設置場所とデバイスタイプ
システムを導入する際には、設置場所や利用シーンに合ったデバイスを選ぶことが重要です。顔認証端末にはさまざまなタイプがあり、適切な選定によって利便性・安全性・効率が大きく向上します。
以下は、主なデバイスタイプとその特徴です。
・タブレット型
持ち運び可能な小型デバイスで、柔軟に設置や運用が可能です。一時的なイベント会場や臨時の入場管理など、場所を選ばず活用できます。短期間での利用や設置の自由度が求められるシーンに最適です。
・受付設置型
固定設置タイプで、建物の受付やエントランスで使用されます。無人受付としても活用可能で、受付担当者の負担を軽減し、来客を待たせることなく対応できます。
・屋外対応型
外部環境に対応したタイプで、防水・防塵性能が高く、雨やホコリ、逆光の影響を受けにくい設計です。屋外の出入り口や工事現場など、天候や環境条件が厳しい場所での利用に最適です。
・ウォークスルー型
歩きながら認証ができるタイプで、利用者が立ち止まる必要がありません。多くの人が出入りする場所での混雑を防ぎ、業務効率を向上させます。
顔認証システムの性能を最大限引き出すためには、導入環境に適したデバイスを選ぶことが欠かせません。設置場所や利用シーンに合わせて最適な選択をしましょう。
ほかのシステムとの連携性
顔認証システムは、単独で使用する場合でも十分役立ちますが、他のシステムと連携することで、さらなる効率化や利便性の向上が図れます。製品によって連携可能なシステムが異なるため、導入前に確認することが大切です。
たとえば、勤怠管理システムと連携した場合、タイムカードの打刻が不要になります。打刻漏れや不正打刻を防ぎ、正確な入退室時間を自動で記録するため、勤怠管理の負担が軽減可能です。
顔認証システムと他システムを連携させることで、効率性や利便性が向上します。検討する際は既存システムとの互換性や、スムーズに連携可能かといった点にも着目しましょう。
運用負荷を軽減する機能
入退室管理システムを選ぶ際は、運用の手間や負担を軽減できる機能が搭載されているかを確認しましょう。
たとえば、遠隔操作機能があるシステムなら、管理者がその場にいなくてもリモートでドアの解錠が可能です。これにより、離れた場所からでも入退室の制御や管理を行えます。管理者が常駐する必要がなく、大幅に手間を削減できます。
加えて、管理の一元化機能があれば、複数の出入り口や拠点を遠隔から一括で管理できるため、人件費や運用コストの削減にもつながります。
日常の管理作業を減らしながらセキュリティを高めたい場合は、こうした便利な機能が搭載されたシステムを選ぶとよいでしょう。
コストと費用対効果
顔認証システムを導入する際は、コストと費用対効果を考えることが大切です。具体的には、以下の費用が発生します。
- ・導入費用(機械の購入やシステムの設置費用)
- ・運用費用(月々の利用料や定期的なメンテナンス費用)
- ・サーバー費用(自社サーバーを使用する場合の必要コスト)
初期費用が高いシステムでも、運用費用が低ければトータルコストを抑えられる可能性があります。顔認証システムは長期間利用するケースが一般的なため、数年単位での総コストを試算し、費用対効果を確認しましょう。
さらに、システムの性能や機能性にも注目する必要があります。高性能なシステムは、業務効率の向上やトラブル対応の削減につながり、結果として長期的なコスト削減を実現できる可能性が高まります。
サポートとトラブル対応
顔認証システムを選ぶ際には、サポート体制やトラブル対応の充実度を確認することが大切です。停電時にシステムが動作しなくなると、従業員や来訪者が建物に入れなくなるといったトラブルが発生する可能性があります。リスクを防ぐためにも、停電時でも解錠できる機能を備えたシステムを選びましょう。
また、機器にトラブルが発生した場合のサポート体制も重要なポイントです。故障したときに無償で交換してもらえる保証があるかを確認しておきましょう。
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こちらの記事では、入退室管理について解説しています。システムの種類や特徴、費用相場も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
5.まとめ
入退室管理システムの顔認証で、セキュリティ性や利便性を高めるためには、認証精度や認証速度が優れたものを選びましょう。
また、業務効率化を図るためには、他のシステムと連携が可能かを確認することも大切です。初期費用だけで判断するのではなく、長期的な運用コストやパフォーマンスも考慮することで、費用対効果の高いシステムを選べます。
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